第291話 奥様から返信はありましたか

しばらくすると、島崎勝人のアシスタントが食事カートを押してきた。冷やした果物、飲み物、ミネラルウォーター、デザートなど、すべてが揃っていた。

鈴木之恵は静かに座っていると、携帯が鳴った。柏木正からのメッセージだった。

【奥様、藤田社長が目を覚ましましたが、後でいらっしゃいますか？】

鈴木之恵はこめかみを揉みながら、徹夜の後遺症を感じ、頭が痛かった。

【今は用事があって行けません。古田先生と一緒に彼の面倒を見てください。】

携帯の向こう側で、藤田深志はベッドに横たわりながら、柏木正が鈴木之恵からの返信を読むのを聞いていた。彼の目は一瞬で暗くなった。眠るべきではなかった。こうなることはわかっていた。彼女は必ず彼が寝ている間に去ってしまうのだ。

柏木正は不安そうに携帯を握りながら尋ねた。

「社長、何か返信しましょうか？」

「昨夜の麺以外は何も食べる気がしないと伝えてくれ。」

柏木正は指を素早く画面上で動かし、すぐにメッセージを送信した。

藤田深志は両手を頭の後ろに置き、柏木正がメッセージを送ったばかりのところで尋ねた。

「どうだ、奥様から返信はあったか？」

柏木正が「まだです」と言おうとした時、ちょうど鈴木之恵からLINEが届いた。彼は一字一字読み上げた。

「社長、奥様が『その麺は藤田家でも食べ切れました。昨日が最後の一食でした。デリバリーを注文しましょうか！』と」

話が終わるや否や、鈴木之恵から新しいメッセージが届いた。スクリーンショットで、彼女が注文したデリバリーの注文情報だった。

柏木正は冷や汗をかきながら、

「社長、返信しましょうか？」

藤田深志の心臓が一瞬止まりそうになった。以前彼が病気の時、彼女はいつもベッドサイドでおしゃべりを続け、彼が休もうとしても静かにさせてくれず、次々と食べ物を運んできた。ワンタンを食べないと麺を作り、麺を食べないと栄養粥を作った。

今では、スープ一杯さえ飲めない状況だ。

藤田深志は感情を抑えて、

「携帯を貸してくれ。」

柏木正は渋々自分の携帯を渡した。藤田深志が受け取ったばかりの時、柏木正の名義で鈴木之恵に自分の惨状を伝えようとしたところ、「ベイビー」という連絡先からメッセージが届いた。