鈴木之恵は前で真剣にバスケをしている二人がまだ競い合っているのを見て、さっきまでは藤田晋司の視線から逃げる口実を探していた。
今は藤田深志の出現で、なぜか少し安心した。
「行きましょう、薬を塗りに付き添います」
あのツンデレは言い出しにくそうに我慢していたから、彼女が先に言って面子を保たせてあげた。
ちょうどいい、彼女も行きたかった。
藤田深志の目が輝き、すぐに立ち上がった。
「之恵、行こう」
柏木正:「……」
やはり奥様の言葉が効くんだな。この世で社長を制御できるのは、病魔の次は奥様だけだ。
藤田深志と鈴木之恵が並んで前を歩き、柏木正は後ろで世話用バッグを片付け、先ほど出した物を一つずつ戻していた。
鈴木之恵は歩きながら小川淳にメッセージを送り、用事があって先に帰ること、また今度ご飯を奢ると伝えた。