そのスタイリストは清水優紀のような傲慢さはなく、とても親しみやすい人柄だった。
「鈴木さん、こちらにどうぞ。詳細について話し合いましょう」
鈴木之恵は安心して座った。来るからには覚悟を決めて、パーティーに出席し陸田直木の同伴者として、きちんと身なりを整えなければジュエリーの宣伝なんてできない。それなら家で子供の面倒を見ていた方がましだ。
スタイリストは鈴木之恵の普段好むメイクスタイルについて尋ねた後、彼女の顔で専門的な技術を発揮し始めた。
メイク中、陸田直木が注文したドレスが届いた。アシスタントが様々なスタイルのドレスを一列に並べて持ってきて、自由に選んで組み合わせることができた。
鈴木之恵は鏡越しに後ろのドレスの列を見て、この規模は大げさすぎると思った。こんなことになるとわかっていたら、死んでも陸田直木についてこなかっただろう。
まるで国際的なスーパースターになったような錯覚を覚えた。特に、メイク中も陸田直木の秘書が度々水やお菓子を持ってきてくれるこの待遇に、少し恐縮してしまった。
メイクとヘアセットが終わり、ドレス選びが始まった。
陸田直木が撮影所で一着見つけると言ったのは、彼女を来させるための嘘だった。それらのドレスは一目で黒田薫のハイエンドな特注品だとわかった。
鈴木之恵は試着室で控えめながら贅沢なロゴを見て、後で彼に代金を振り込もうと考えた。他人に借りを作るのが一番嫌だった。
全て試着した後、皆一致して黒のバックレスドレスが今日のメイクに最も合うと判断した。
鈴木之恵は半ば強制的にそのドレスを着せられた。前回黒のドレスを着たのは藤田晋司の店で買ったものだった。今回の服は前回以上にインパクトがあり、彼女の肩甲骨が完璧に強調され、スタイリストが意図的にアイメイクを濃くしたことで、全体的に妖艶で優美、魅惑的で、セクシーさが極限まで引き出されていた。
彼女自身も自分が見知らぬ人のように感じた。
夜、鈴木之恵は陸田直木と共にパーティー会場に到着した。
陸田直木はまず自社所属の数人のスターを鈴木之恵に紹介した。鈴木之恵は芸能人に興味はなかったが、その中の一人が八木真菜のアイドルだったので、八木真菜のためにサインをもらった。