「お姉ちゃん、お姉ちゃん、私はあなたを殺そうとしたわけじゃないの。あれは全部母がやったことで、私には関係ないわ!信じて、私たちは姉妹よ。どんなに憎んでいても、口だけのことだったわ。そんなひどいことをするわけないでしょう、私は...」
言葉が終わらないうちに、藤田深志が素早く彼女を押しのけた。
「秋山奈緒、是非は明白だ。警察が皆に説明するだろう。誰かの一存で決まることじゃない。法の裁きを受けるんだな!」
二人の警官が前に出て、左右から興奮している秋山奈緒を押さえ、連行しようとした。
鈴木之恵は感情を落ち着かせて、
「秋山奈緒、中でどうなろうと、私の母の物はしっかり保管しておいてね。いつかは必ず返してもらうわ」
秋山奈緒の泣き叫ぶ声が急に止まり、鈴木之恵のその一言で背筋が凍った。
いつか返さなければならない、自分の母のようにということか?
秋山奈緒が連行され、ホールの雰囲気はすぐに元に戻った。みんなただの野次馬で、他人事として見ているだけだった。
鈴木之恵が冷静になってから、自分の手が藤田深志にしっかりと握られていることに気づいた。
さっき秋山奈緒が同じ手口を使って床に倒れた瞬間、彼女は不思議と慌てて、無意識に藤田深志が秋山奈緒の側に立って自分と対立するのではないかと思った。
でも、そうはならなかった。
藤田深志は彼女の手のひらをもう一度握りしめ、
「之恵、大丈夫だよ。僕がいるから」
鈴木之恵はしばらくして笑い、彼の手から自分の手を抜いた。彼女は今や一人でいることに慣れていた。
村上拓哉が雰囲気を和らげようと近づいてきて、
「お嫂さん、上階でお茶が用意できてます。少し休憩しませんか?」
八木修二も近寄ってきて、心配そうに尋ねた。
「之恵、大丈夫?」
鈴木之恵は今、頭が少し混乱していた。秋山奈緒との一件がようやく決着し、あとは警察の判断を待つだけだった。
三人の男性に囲まれて、鈴木之恵はエレベーターに乗り、最上階へ向かった。
村上拓哉の部下がお茶を入れ、フルーツプレートを用意し、さらに気を利かせていくつかのミルクティーも用意していた。
鈴木之恵はそこに座って少し上の空だった。
ここまでやれば解放されると思っていたが、そうではなかった。