第367話 子供の虜

鈴木之恵がベランダに向かう前に、藤田深志が途中で彼女を遮り、大きな手で彼女の手首を掴んで脇へ引っ張った。

「之恵、私が片付けるよ」

普段は怒らない鈴木之恵だが、藤田深志は彼女のその表情を見て子供を叩くのではないかと思い、急いで彼女を脇に引っ張り、自分で掃除道具を持って片付け始めた。土を全て取り除いて床を拭き、ようやく床がきれいになった。

鈴木之恵は彼に椅子に座らされ、落ち着いて後片付けを見ていた。八木真菜はいつの間にか隣に座り、彼女の耳元に近づいて、

「之恵、この藤田社長、前とちょっと違うみたいね。どう言えばいいのかしら?」

八木真菜は頬に手を当てて考え込んで、

「今は生活感が出てきたような気がする。トイレでも使用人に紙を渡してもらうような坊ちゃまだと思ってたのに、床掃除までできるなんてね?」