年を取ると誰もが子や孫のそばにいてほしいと思うものだ。お爺さんは頑固な考えを持っていなかったので、子供たちが幸せなら何でも構わなかった。藤田深志に鈴木之恵と一緒に東京都に行ってほしいと思うのは本当だし、心の中で少し寂しく感じるのも本当だった。
藤田深志は馬鹿ではないので、お爺さんの気持ちを見抜いていた。年を取ると子供のようになるもので、お爺さんの我慢している様子が分かっていた。
「お爺さん、実は一緒に東京都に来てもいいんですよ。前に言ったように、あそこに家を買ってあるんです。川が見える高層マンションで。南の方が空気もいいし、お爺さんの健康にもいいと思います。」
前回の話を思い出し、お爺さんはようやくこの若者が前に言った「東京都にも家族がいる」という言葉の意味を理解した。そういう含みがあったのだ。