第381章 薬だらけ

鈴木之恵のこの質問で、車内の雰囲気が一気に緊張した。

思わず運転席の方を見やると、ちょうど赤信号で、藤田深志は前方を見つめ、大きな手でハンドルを握り、表情は無く、何を考えているのか分からなかった。

数秒後、電話の向こうの鈴木由典が答えを出した。

「条件なんてそれぞれだよ。うちの家庭の雰囲気も知ってるだろう。俺たちは世間体なんか気にしない。お前の将来のパートナーが、貧乏でも不細工でも、お前が好きならお兄さんは反対しない。ただし一つだけ覚えておけ。相手の人柄は絶対に良くなければならない。特に藤田という姓は絶対ダメだ!」

鈴木由典の後半の言葉に、鈴木之恵は思わず胸が締め付けられた。藤田深志のことを少し探りを入れようと思っていたが、鈴木由典のそんな断固とした態度を聞いて、言葉は喉に詰まった。

今は言い出せない。まずは家族の前で藤田深志の存在感を少しずつ示してから考えることにしよう。

「お兄さん、もう切るね。弘美が眠そう」

鈴木之恵は弘美を言い訳にして、急いで電話を切った。これ以上話を続けたら、ばれてしまうかもしれない。

電話が切れると、車内には先ほどの気軽な雰囲気はなかった。

鈴木之恵は密かに藤田深志の表情を観察したが、先ほどと変わらなかった。彼女の不安な心は徐々に落ち着いていった。聞こえていなかったようで良かった。

車はすぐに別荘に到着し、藤田深志は車を降りて鈴木弘美を抱き下ろした。鈴木弘文は彼に触らせず、自分で降りようとし、四人家族は家に戻った。

二人の子供たちはリビングでおもちゃで遊び、藤田深志は部屋着に着替えて書斎に入った。

鈴木之恵は冷蔵庫を開けて中を確認したが、あまり食材がなかった。週末は家で食事をしていなかったし、買い物をする時間もなかった。数分後、彼女は書斎のドアをノックした。

藤田深志は電話中で、鈴木之恵はドア前で待っていた。彼が通話を終えてから入室した。

藤田深志は彼女に腕を伸ばし、そのまま引き寄せて膝の上に座らせ、顎を彼女の首筋に乗せ、しばらくしてから尋ねた。

「之恵、君の家の条件って何?」

鈴木之恵は理由もなく緊張し始めた。

「べ、別に何もないよ」

車の中で彼女が電話をしているとき、藤田深志はほとんど聞いていた。スピーカーフォンではなかったが、車内が静かだったため。鈴木由典の態度は予想通りだった。