鈴木之恵のこの質問で、車内の雰囲気が一気に緊張した。
思わず運転席の方を見やると、ちょうど赤信号で、藤田深志は前方を見つめ、大きな手でハンドルを握り、表情は無く、何を考えているのか分からなかった。
数秒後、電話の向こうの鈴木由典が答えを出した。
「条件なんてそれぞれだよ。うちの家庭の雰囲気も知ってるだろう。俺たちは世間体なんか気にしない。お前の将来のパートナーが、貧乏でも不細工でも、お前が好きならお兄さんは反対しない。ただし一つだけ覚えておけ。相手の人柄は絶対に良くなければならない。特に藤田という姓は絶対ダメだ!」
鈴木由典の後半の言葉に、鈴木之恵は思わず胸が締め付けられた。藤田深志のことを少し探りを入れようと思っていたが、鈴木由典のそんな断固とした態度を聞いて、言葉は喉に詰まった。