藤田深志が話し終えると、二人はまた暫く沈黙が続いた。
鈴木之恵は、この慎重な説明に対して、内心では満足していた。彼の態度のおかげで、彼女の気分はかなり良くなった。
「藤田社長の目には、私がそんなに小心者に見えるんですか?」
藤田深志は大きく息を吐いて、
「之恵、怒ってないの?」
「バカね、こういうこと、隠そうとする方が後ろめたいでしょう。正直に認めるなら、私が怒る理由なんてないわ」
藤田深志は額の汗を拭って、
「お前に会いたいよ」
突然の素直な甘え方に鈴木之恵は一瞬戸惑って、
「何を言ってるの、あなたはまだ試用期間の彼氏で、審査も通ってないわ。藤田社長はもっと頑張る必要があるわね」
藤田深志は不満げに、
「頑張るよ。三日後に東京都に飛ぶけど、何か持って来て欲しいものがあったら早めに教えて」
「私はついさっき戻ってきたばかりだから、特に要らないわ。自分の荷物をちゃんと持ってきてくれれば十分よ。物を忘れないでね、今回は荷造りを手伝えないから」
荷造りの話が出て、藤田深志は苦々しい顔をした。鈴木之恵が離れてから、出張の度に何かを忘れてしまう。どんなに注意しても、彼女ほど細かいところまで気が回らなかった。
「之恵、木下パン屋のお菓子を持って行こうか?」
鈴木之恵は額に手を当てた。彼女が京都府にいた間、体重が6キロも増えて、お腹まで出てきていた。藤田深志は家で料理を作るだけでなく、様々なスイーツを買ってきては彼女に食べさせていた。
「やめておきましょう...油脂が多くて太りやすいから」
藤田深志は彼女の口調から食べたがっているのが分かり、唇を曲げて答えた。
「分かった、じゃあ少しだけ買っていくよ」
鈴木之恵:「...」
日本語が通じないのかしら?
「昨日はどうして電話してくれなかったの?」
突然の話題転換に藤田深志はまた言葉に詰まった。病院を出た後、気分が優れなかったので心理カウンセリングに行き、その後茅野さんに勧められて眠ってしまい、起きたら気分は良くなっていた。
彼は彼女に隠し事をする気はなく、率直に言った。
「之恵、昨日病院を出た後、心理医のところに行ったんだ」
鈴木之恵の心が締め付けられた。
「また吐いたの?」