お爺さんは少し黙り込んでから、
「行くのはいいが、若い者と一緒に住むのは遠慮したい。不便だからな」
藤田深志は自分がまた嫌われたような気がして黙り込んだ。
「お爺さん、何も不便なことはありませんよ。休憩時間に騒音を立てて邪魔することは絶対にしませんし、他の面でも特に問題ないでしょう?」
お爺さんは電話を持ちながら、口角を少し上げた。彼の言う不便さは自分のことではなく、若い二人に気を遣わせたくないということだった。
孫がようやく嫁を取り戻したのだから、若い二人には空間が必要だ。自分が電灯泡になるわけにはいかない。
「行かないよ。新しい家を買ったら考えてやろう」
藤田深志は額に手を当てた。お爺さんが弘文よりも反抗的になって、拗ねているようだ。
「お爺さん、じゃあ先に私の家に住んで、私が出て行きましょうか?」
お爺さんは二人の曾孫を抱きたい強い誘惑を抑えながら、意地を張って言った。
「お前が之恵の家に引っ越せるなら引っ越せばいい。彼女が受け入れてくれないなら仕方がない。新しい家を買うまで待つよ」
藤田深志は心の中でため息をついた。今はそこまでの段階には至っていない。妻を取り戻す道のりはまだ長い。
「分かりました。では家を買って、それからお迎えに行きます」
電話を切ると、藤田深志はすぐにお爺さんの古い友人である小野田お爺さんに電話をかけ、余分な家があれば一軒譲ってもらえないかと尋ねた。
小野田お爺さんはこれが藤田お爺さんのための家だと聞いて、老友と十数年も会っていないことを思い出し、すぐに管理人に不動産証書を全部持ってこさせて確認した。
「お前は運がいいな。お前が買った高層マンション、その上の階の部屋も私のものだ。藤田お爺さんにそこを使ってもらえばいい。私たち二人の間で遠慮することはない」
藤田深志は承知しなかった。
「小野田お爺さん、やはり値段を言ってください。お爺さんとの付き合いも長いですし、この家を買わないと落ち着かないでしょう。後で私が叱られることになります」
小野田お爺さんは首を振りながらため息をついた。
「分かった、藤田お爺さんは几帳面な人だからな。じゃあ前の部屋と同じ値段でいいよ。お爺さんが来る時は前もって一声かけてくれ。私が迎えに行って、二人で久しぶりに話でもしよう」