お爺さんは少し黙り込んでから、
「行くのはいいが、若い者と一緒に住むのは遠慮したい。不便だからな」
藤田深志は自分がまた嫌われたような気がして黙り込んだ。
「お爺さん、何も不便なことはありませんよ。休憩時間に騒音を立てて邪魔することは絶対にしませんし、他の面でも特に問題ないでしょう?」
お爺さんは電話を持ちながら、口角を少し上げた。彼の言う不便さは自分のことではなく、若い二人に気を遣わせたくないということだった。
孫がようやく嫁を取り戻したのだから、若い二人には空間が必要だ。自分が電灯泡になるわけにはいかない。
「行かないよ。新しい家を買ったら考えてやろう」
藤田深志は額に手を当てた。お爺さんが弘文よりも反抗的になって、拗ねているようだ。
「お爺さん、じゃあ先に私の家に住んで、私が出て行きましょうか?」