第394章 旧知

東京都。

鈴木之恵は職場向けのメイクをし、上半身には白いシルクのシャツを着て、オフィス風のスカートと合わせ、頭からつま先まで完璧なキャリアウーマンの雰囲気を醸し出していた。

彼女は自分の車で会社に向かう途中、アシスタントの木村悦子から電話がかかってきた。

「芽さん、今日は確実に戻ってきますよね?」

鈴木之恵は片耳にイヤホンをつけたまま、赤い唇を開いて答えた。

「今、会社に向かっているところよ。」

電話の向こうで木村悦子は興奮した様子で言った。

「芽さん、やっと戻ってきてくれましたね。今日の午後、面接の予約をしているデザイナーがいるんです。履歴書には大手企業での勤務経験があると書いてあります。芽さんが直接面接してください。」

赤信号が終わり、鈴木之恵はアクセルを軽く踏んだ。

「今は話せないわ。すぐに着くから。」

会社は最近新しい人材を募集しており、多くの新人が来ていた。最終面接は鈴木之恵がリモートで決定していた。この期間、木村悦子はスケジュール調整と京都府での鈴木之恵の仕事との兼ね合いを考慮しなければならず、アシスタントの仕事の難易度は上がっていた。

鈴木之恵が会社に到着すると聞いて、昇給以上に喜んで言った。

「分かりました、芽さん。コーヒーを入れて待っています。」

鈴木之恵は車を駐車場に停め、ハイヒールで階段を上った。

会社のドアを開けると、歓声が上がった。新しい顔ぶれも古い顔ぶれも彼女を出迎えた。チームはこの期間で大きく拡大し、オフィスの空いていた席にもパソコンが置かれていた。

鈴木之恵は周りを見渡して言った。

「みんな早く来てるわね。お昼に食事会をしましょう。新しい同僚の歓迎会よ!」

木村悦子は横で嬉しそうに笑いながら言った。

「はい、芽さん。私が手配します。」

鈴木之恵の方では仕事が山積みになっており、午前中はずっとオフィスで作業をしていた。昼近くになって、木村悦子から食事会の場所が送られてきた。鈴木之恵はレストラン名を見て、南国レストランだった。

どこかで聞いたことがある気がして、よく考えてみると、京都府に戻る前に藤田深志が東京都のオフィスの人たちを連れて行ったレストランではないか。

レストランに着くと、鈴木之恵はどこもかしこも見覚えがあるような気がした。料理だけでなく、内装にも親近感を覚えた。