東京都。
鈴木之恵は一晩の休息を経て、体調は既に問題なくなっていた。
鈴木由典は彼女が朝食を食べ終わるのを見守り、病室で仕事を処理し始めた。帰る気配はなく、特に彼の秘書が何度も書類を持って来ては、仕事の報告をし、午前中はコマのように忙しく動き回っていた。
鈴木之恵は退屈そうに部屋の中を行ったり来たりしていた。退院したいと思ったが、鈴木由典は許可せず、この一日を過ごしてから明日の朝に退院手続きをするように言った。
「お兄さん、会社に戻ったら?こんなことされると、私、プレッシャーを感じちゃう」
彼女は元気な体で兄の仕事の邪魔をしたくなかった。藤田深志の側で3年間過ごした経験から、大企業の社長がどれほど忙しいかを知っていた。
鈴木由典は書類に署名を終えて脇に置き、テーブルの書類を全てファイルに収めてから、やっと顔を上げて彼女を見た。