第412章 このタバコより中毒性が強い

鈴木之恵は自分の会社のことを思い出し、軽く触れた。

「これから仕事で衝突することもあるかもしれません」

同じ業界にいて、鈴木之恵もハイエンドブランドを作り上げたいと考えていた。国内を見渡せば、藤田グループが最大のライバルとなるだろう。

藤田深志は車を発進させ、本線に合流した。

「之恵、これからは君に守ってもらわないとね。東京都は君の縄張りだろう？」

彼の強引な弱気な態度に、鈴木之恵はこれが彼らしくないと感じた。仕事の面では、彼はいつも上に立つ人物で、誰かに守られる必要があるなどと言うことはなかった。

他人を庇護するか、抑圧するかのどちらかだった。

鈴木之恵はため息をつきながら言った。

「これからビジネスの場で会うことがあれば、藤田社長、手加減してください。足を引っ張らないでくださいね」

藤田深志は首を振り、微笑んだ。

「ベッドの上以外では、君の足は引っ張らないよ」

ちょうど交差点で赤信号になり、彼は横を向いて彼女を見た。鈴木之恵は腕を窓に置いて寄りかかっており、外のネオンが彼女の顔に映り、ぼんやりとした雰囲気を醸し出していた。空気は妖しい意味を帯びていた。

後ろの車がクラクションを鳴らし続け、藤田深志は我に返って前が青信号になっていることに気付いた。

鈴木之恵は、彼のあの艶めかしい言葉にどう応じればいいのか考えていた。

藤田深志は視線を戻し、道路状況に集中しながら、口元の笑みを隠しきれずに言った。

「之恵、ここは君の縄張りだから、これからうちの商売は君に頼るよ」

鈴木之恵は彼の言葉の一つ一つに持ち上げられ、褒め殺しにされているような錯覚を覚えた。彼女にどんな資格があって藤田グループのような大企業を守れるというのか？

彼女のような事業を始めたばかりの小さな会社が、同業の大手に潰されずに済むだけでも幸運なのに。

しかし藤田深志のこの言葉には彼女を揶揄する意図はなく、真剣に彼女の実力を認めているのだった。鈴木由典という後ろ盾もあり、確かに彼女にはその資本があった。

鈴木之恵は話題を変えて言った。

「藤田深志、私、賞を取ったの」

藤田深志はこの業界の大物として、このようなジュエリーデザイン関連のコンテストには当然注目していた。彼女が受賞したことは、少しも不思議ではなかった。