第413章 人を愛する時、目は隠せない

鈴木由典は振り返って思わず罵った。

「このクソ野郎」

その声は車内の運転手にしか聞こえなかったが、藤田深志は馬鹿じゃない。彼の口の動きを見ただけで、良い言葉ではないことは分かった。

しかし彼は気にしなかった。この義弟はいずれ認めざるを得ないのだから。

藤田深志は鈴木之恵の部屋がどこにあるのか知らなかった。ただ彼女がこの高級住宅街の一軒に入っていくのを見ていた。彼は何とも言えない気持ちだった。ここでも彼女を見たり触れたりすることはできないが、彼女との距離が一歩近づいたような気がして、心が落ち着いた。

翌日、鈴木之恵は会社でデザイン部の朝会を終えた後、オフィスに座って高齢者向けの栄養補助食品を購入した。

おじいさまが東京都に来られたことを知り、当然挨拶に伺わなければならない。