鈴木由典はエレベーターを出て、倒れかけた鈴木之恵を受け止めた。
之恵は夜に家で食事をすると約束していたのに、おばあさまは一晩中待っても姿を見せず、電話も繋がらなかったため、すぐに長孫を呼び戻して捜索させた。
鈴木由典が之恵の会社ビルの下に着いた時、彼女の車は敷地内に停まっていて、ドアは開いたままロックされていなかったが、人影は見えなかった。彼は不吉な予感がして、すぐに警備員に連絡して監視カメラを確認し、追跡してきた。
鈴木由典は色を失った。東京都の地盤で、鈴木家の者に手を出すような大胆な者はいないはずだ。妹を連れ去った者を簡単には許さないつもりだった。
「之恵、之恵、大丈夫か?」
話している間に、スイートルームのドアが開き、鈴木由典は殺気を帯びた目で見つめ、目つきだけで相手を殺せそうだった。出てきたのが藤田晋司だと分かると、目を細めた。