第424章 自制して、ここは会社だから

藤田深志はまだ主権を主張することを諦めず、目の前のグラスを取ってお酒を注ぎました。

「うちの之恵のために芸能人を紹介してくれてありがとう。同級生としてここまでするのは簡単なことじゃない、まして小学校の同級生なら尚更だ。金持ちになった人の多くは同級生の名前すら覚えていないのに、君は同級生の妻の宣伝を手伝ってくれる。この恩は忘れない。今後何か手助けが必要なら、必ず協力させてもらう」

藤田深志のこの長々しい公式な発言に、鈴木之恵は隣で呆然としていました。

陸田直木は慣れた様子で、彼にとってはこの腹黒い男と初対面というわけではありませんでした。

「藤田社長、お言葉が過ぎます。はっきり言っておきますが、私は同級生という面子で動いているわけではありません。本当に友人を助けたいと思っているんです。数年前、私が東京都に来たばかりの頃、之恵さんにも随分助けてもらいました。私たちはビジネスパートナーですから、お互いに助け合うのは当然のことです。プレッシャーを感じる必要はありません」

鈴木之恵は隣で必死に思い出そうとしていました。自分が陸田直木を助けたことがあったかどうか。

どうやらなかったようです。

この食事の間、三人とも頭を使い果たすほど、まさに高度な駆け引きを繰り広げ、一歩間違えれば致命的な結果になりかねませんでした。

南国レストランを出て、藤田深志は腕時計を確認し、鈴木之恵に尋ねました。

「午後の予定は?」

鈴木之恵は仕事が山積みだったので、正直に答えました。

「京都府とのビデオ会議があって、それに会社のデザイナーから提出された企画書を確認しないといけません。それから自分のデザインも…」

仕事を数え上げれば上げるほど増えていきました。

藤田深志も午後は用事がありました。新しく借りたオフィスの準備は整い、事務用品も揃いましたが、従業員がいない状態では困ります。今は人材を集める重要な時期で、細かい仕事は軽視できません。

「じゃあ、先に会社に戻るよ。何かあったら連絡して」

三人は交差点で二手に分かれ、藤田深志は信号待ちの間、陸田直木が鈴木之恵の横に立っているのを見て、どうしても気分が悪くなりました。

「陸田、午後の予定は?」

陸田直木は苦笑いして、

「どうしました?また藤田社長がクラスの誰かを差し向けて私につきまとわせるんですか?」