鈴木之恵は小さく息を吸い、肺に酸素を満たし、長く吐き出した。まるでそうしなければ窒息してしまいそうだった。
しばらくして、彼女は彼の胸に寄り添いながら、小声で囁いた。
「午後に弘美と話したの。今は寝ているはずだから、私を待っていないと思う」
鈴木之恵は彼の質問に直接答えなかったが、藤田深志はその意味を即座に理解した。
彼女が拒否しないということは、受け入れるという意味だった。
藤田深志は彼女の顔を両手で包み、親指で目尻を優しく撫でた。単純な動作だが、このような雰囲気の中では妖しく感じられた。
彼は彼女の唇を吸うように口づけた。ゼリーのような質感で、ふっくらと弾力があり、どれだけ味わっても足りなかった。
どれくらいキスしたのかわからないが、鈴木之恵にはまだ少しの理性が残っていた。心の中では、ここはオフィスだと警告していた。頭の中では、冷静な自分と情欲に溺れた自分が激しく引き合っていた。
彼女のブラウスのボタンが全て外され、鈴木之恵は胸元に顔を埋めている人を軽く押した。
「藤田深志、誰か来るかも...」
藤田深志は一瞬止まり、振り返って部屋を見回した。ドアは施錠され、ブラインドも閉まっていた。
「之恵、鍵はかけてある。誰も来ないよ」
彼が再びキスしようとすると、鈴木之恵は少し身を引いた。
「あの...アレ、買ってない...」
藤田深志は彼女から離れ、次の瞬間にポケットから二つの小箱を取り出した。イチゴ味とバニラ味、彼女の好きな味だった。
彼女がよく知っているブランドで、彼は几帳面な性格で、そのブランドしか使わなかった。二箱で十二個入り。
鈴木之恵のまつ毛が震え、突然これが罠だと気付いた。彼はミルクティーを買い、アレも買って、彼女を呼び出した。純粋な意図などないことは明らかだった。
「いつ買ったの?」
藤田深志は隠さず、正直に答えた。
「夕食後、薬局の前を通った時に」
彼女の審査するような目つきを見て、藤田深志は少し気まずくなった。彼の下心は顔に全て書かれていた。彼女を呼び出した時から目的があったことを認めた。
鈴木之恵が彼を睨むと、彼は再び近づいて彼女の目や眉にキスをした。謝るような様子で。
「之恵...」
彼は彼女をデスクに座らせ、自分は彼女の両脚の間に入り込んだ。