鈴木之恵は食欲がなく、元気がなさそうだった。窓の外を見ると、この辺りは北郊の墓場から近かった。
「藤田深志、墓場に連れて行ってくれない?おばあちゃんがそこに眠っているの。しばらく行ってないから」
「ああ」
今は彼女が何を言っても、彼は承諾するばかりだった。
藤田深志はナビを起動し、北郊の墓場へと向かった。赤信号で止まった時、収納ボックスからキャンディーを取り出して彼女に渡した。
鈴木之恵は少し驚いて、
「車の中にこんなものがあるの?」
「この前、子供たちにおもちゃを買った時についてきたんだ。歯が悪くなるから食べさせなかったけど、君は食べて」
今は彼女を少しでも元気づけたかった。キャンディー一つで大したことはできないが、せめて口の中の苦さを和らげられればと思った。
鈴木之恵は鼻をすすり、包み紙を開けてキャンディーを口に入れた。