鈴木之恵は食欲がなく、元気がなさそうだった。窓の外を見ると、この辺りは北郊の墓場から近かった。
「藤田深志、墓場に連れて行ってくれない?おばあちゃんがそこに眠っているの。しばらく行ってないから」
「ああ」
今は彼女が何を言っても、彼は承諾するばかりだった。
藤田深志はナビを起動し、北郊の墓場へと向かった。赤信号で止まった時、収納ボックスからキャンディーを取り出して彼女に渡した。
鈴木之恵は少し驚いて、
「車の中にこんなものがあるの?」
「この前、子供たちにおもちゃを買った時についてきたんだ。歯が悪くなるから食べさせなかったけど、君は食べて」
今は彼女を少しでも元気づけたかった。キャンディー一つで大したことはできないが、せめて口の中の苦さを和らげられればと思った。
鈴木之恵は鼻をすすり、包み紙を開けてキャンディーを口に入れた。
車が霊園に着いた時、彼女はキャンディーを噛み砕いて飲み込み、服を整えて車を降りた。
今回は急いで来たため、花束も、おばあちゃんの好きな北京の伝統的なお菓子も買えなかった。
鈴木之恵は墓前に立ち、墓石に刻まれたおばあちゃんの慈愛に満ちた表情を見つめながら、あんなに優しい人がどうして秋山泰成のような邪悪な息子を産んでしまったのか、理解できなかった。
おばあちゃんがよく耳元でつぶやいていた言葉を思い出した。
「秋山家はお前のお母さんに申し訳ないことをした。お前にも申し訳ない。おばあちゃんは力がなくて、子供をまともに育てられなかった…」
当時は幼くて、おばあちゃんが後悔していたのは、秋山泰成が愛人を作って秋山奈緒を産んだことだと思っていた。今になって考えると、おばあちゃんはすべての真相を知っていたのだ。
おばあちゃんは彼女が本当の孫娘ではないと知っていても、秋山泰成が秋山奈緒母娘を別荘に連れて帰ってきた後、実の息子と絶縁した。
鈴木之恵は墓前で何度も頭を下げた。彼女は心から感謝していた。孤児になった時、おばあちゃんは血のつながりがないにもかかわらず、彼女を見捨てることなく、家族として受け入れてくれた。
おばあちゃんは息子を制御できなかったが、秋山泰成の残虐な行為を静かに償おうとしていた。
藤田深志も彼女と共に跪き、おばあちゃんの墓前で頭を下げた。