第453章 人に見せられない？

田中清彦が出て行くと、鈴木之恵は困惑して言った。

「田中おばあちゃん、私、服を持ってこさせることもできたのに、ご面倒をおかけして。」

お年寄りは彼女の手を叩きながら、

「何も面倒じゃないよ。私はあなたのことが好きなの。」

しばらくすると、田中清彦は丁寧に包装された箱を抱えてテーブルに置き、その贈り物の箱を数秒見つめ、名残惜しそうに出て行った。

箱の中には改良されたチャイナドレスが入っており、生地を見ただけで市場で売られているものとは違うことが分かった。

おばあさんは服を取り出して彼女に当ててみた。

「鈴木お嬢ちゃん、これを着てみなさい。この服は絹製で、模様は無形文化財の継承者が一針一針手作業で刺繍したものよ。田中叔父さんが長年大切にしていたの。誰かにプレゼントするつもりだったけど、なぜか渡さなかったの。あなたの雰囲気にぴったりだと思うから、今はあなたにあげるわ。」

鈴木之恵はこの服が特別なものだと分かっていたが、こんなに貴重だとは知らず、慌てて手を振った。

「田中おばあちゃん、それは申し訳ありません。この服はとても高価で、しかも田中社長の大切なコレクションですから、私には受け取れません。」

おばあさんは顔を引き締めて、

「着てみせてくれないの？この服は私と清彦が関西から持ち帰ったものよ。ずっと家に置いてあるの。うちには女性が一人もいないし、父と息子は二人とも独身。誰に着せればいいの？」

鈴木之恵はまだ遠慮して、

「田中おばあちゃん、本当に相応しくないです……」

おばあさんは怒りそうになって、

「今日は私の誕生日なのに、あなたはわざと私に逆らうつもり？」

鈴木之恵は言葉に詰まり、仕方なく更衣室に向かって服を着替えた。出てくると、おばあさんは褒めちぎった。

「あなたは本当に着こなすわね。まるでオーダーメイドみたいにぴったりよ。これはもう私からのプレゼントということで。さあ、一緒に下に行ってケーキを切りましょう。」

おばあさんは鈴木之恵の手を引いて出てきた。田中清彦が入り口に立っており、鈴木之恵を見て明らかに一瞬固まった。おばあさんが呼んでようやく我に返った。

「田中晃はどう？見つかった？」

「見つかりました。下にいます。島崎さんに見ていてもらっています。早く下りてください。でないとまたあの困った子を捕まえられなくなりますよ。」