第483章 封殺

柏木正はその日帰宅後、深い感慨に浸り、夜には妻を抱きしめて本心を打ち明けた。

「妻よ、君の家族が僕にどう接しようと、僕は必ず君を大切にする。君は僕の心の中で最も大切な人なんだ。」

柏木正は我に返り、社長がまだ彼の返事を待っていることに気付いた。

「藤田社長、妻の実家との関係を維持するのは簡単だと思います。ただ一つのポイントがあります。奥様に優しくし、さらに熱心な態度を見せ、それを家族の目の前で示すことです。皆さんに本当に奥様を大切にしているところを見せれば、家族も安心して奥様を任せてくれるはずです。」

藤田深志は目尻を少し上げ、理解したようだった。

彼女を大切にすること、それは彼にできる。ただ、彼はいつも控えめな行動をとってきたが、これからはもっと明確に示さなければならない。特に鈴木由典の前では。

彼の頭の中に努力すべき方向性が見えてきた。

「奥様と田中晃が恋人関係だと実証する投稿をしたIDは調べたか?」

話題の転換が急すぎて、柏木正は数秒反応できなかった。

「調べました。相手のIDは城南地区のある病院からのものです。」

藤田深志は革張りの椅子から立ち上がり、ハンガーにかかっていたスーツの上着を腕に掛けた。

「今すぐ病院へ行こう。」

柏木正は慌ててエレベーターのボタンを押しに行った。

車はすぐにIPアドレスが示す場所に到着し、藤田深志は車を降りて建物に向かって歩き始めた。

病院は毎日多くの人々が出入りし、犯人を見つけ出すのはそう簡単ではなく、他の手段も必要かもしれない。しかし今日は何となく不安を感じ、空振りに終わる可能性が高いと分かっていても、この病院に来なければならないと感じていた。

藤田深志が重々しい足取りで前に進む中、柏木正は後ろについて行きながら、

「社長、まず院長に入院患者と家族の電話番号を確認して、その中から範囲を絞って探してみましょう。」

「適当に頼む。」

藤田深志はただ前に進み続け、緑地帯近くの小さな休憩所を通り過ぎる時、どこかで聞いたことのある声に引き寄せられた。振り向くと、休憩所で感情的になっている女性が見覚えのある顔だった。

「この人は...」

柏木正は目ざとく、その女性が山田結城だと認識した。