第485章 またあの犬野郎に拾われた

その時、藤田深志は手にミルクティーを持って車の前にもたれかかり、鈴木之恵が出てくるのを待っていた。まるで熱心な犬のような様子だった。

鈴木由典は顔を上げることもなく、運転手に直接指示した。

「前に進め」

鈴木之恵は携帯を握りしめながら、おそるおそる口を開いた。

「お兄さん、時間を作って一緒に食事でもどう?」

鈴木由典はタブレットを手に取り、マーケティング部から上がってきた最新の書類に目を通しながら、淡々と返事をした。

「時間がない」

時間があったとしても、藤田のやつめと一緒に食事をする気はなかった。

鈴木之恵はそれ以上言い出せなかった。彼女は体を横に向けてバックミラーを見ると、藤田深志の車が後ろを追いかけていた。

車がゆっくりと停止し、運転手が振り返って状況を報告した。