医者がドアを開けて出てきて、
「患者さんは両肺に感染があり、さらに水が溜まっている状態です。入院治療をお勧めします。ご家族の方、署名をお願いします」
藤田晋司が前に出て署名した。
藤田深志は医者の前に行って尋ねた。
「先生、祖父が眠れず、食事もろくに取れていないのですが、まずは一度ゆっくり眠らせる方法はありませんか?」
医者は眉をひそめ、
「休息は大切ですね。薬を処方しましょう。後で病室で注射をします。ご家族の方は付き添いをお願いします。食事は薄味にしてください。まずは入院手続きをお願いします」
藤田深志は入院手続きを済ませ、印刷された書類の日付を見て、今日は祖父のことで驚いて、鈴木之恵を迎えに行く約束を完全に忘れていたことに気付いた。
携帯を取り出すと、鈴木之恵からの不在着信が7件あった。