第503章 信仰の崩壊

藤田深志はスリッパを床に投げ捨て、裸足で玄関まで歩いた。

祖父の部屋のドアは開いていて、部屋は暗かった。彼がドアの前で静かに立っていると、数秒後、お爺さんのかすれた声で呼ばれた。

「深志が帰ってきたのか?之恵と一緒に帰らなかったのはなぜだ?」

藤田深志は深く息を吸って中に入った。

「お爺さん、まだ起きてるの?」

お爺さんは手を伸ばしてベッドサイドのランプをつけ、体を動かして座り直した。

「年を取ると、あまり眠れなくなるんだよ。少し目を閉じるだけで十分だ」

藤田深志は感情的な人間ではなかったが、この瞬間、祖父の老いた姿を見て、思わず鼻が何度もつんとした。

灯りの下で、お爺さんの濁った両目がはっきりと見えた。長い間眠れていないかのように、極度の休息不足の様子だった。叔父の言う通り、その目は一日一晩も閉じていないかのようだった。