バリーのこの反応で鈴木之恵の心臓は再び喉元まで上がってきた。
「姉さん、嘘をつかないで。あなたから真実を聞きたいの。良いことも悪いことも、あなたたちがそこで何が起きたのか全部聞かせて。」
バリーは少し黙った後、口を開いた。
「彼はまず医者のふりをして診察室で私に脱出計画を話してくれて、護身用の銃まで渡してくれたの。でも私は使い方が分からなくて、結局彼に返したわ。誰かが助けに来てくれると分かって安心したの。彼らが私を救出する時は、かなり混乱した状況で...」
バリーはここまで話して、一旦止まり、鈴木之恵を見てから続けた。
「彼らが私を救出する時、アレックスが捕まって、私を監視していた傭兵たちと一団が戦い始めたの。お兄さんが混乱に乗じて私を部屋から連れ出してくれたわ。」
鈴木之恵は息を荒くして聞いていた。
「じゃあ藤田深志は?彼には会わなかったの?」
バリーは布団の中に少し潜り込んだ。
「之恵、疲れたわ。明日また話そうよ。」
この言葉で鈴木之恵は完全に眠れなくなった。隣から聞こえる規則正しい呼吸音を聞きながら、そっと起き上がって自分の部屋に戻ると、藤田深志の携帯はまだつながらなかった。
夜明けになって、携帯の着信音で朦朧と目を覚ました彼女は、画面に表示された見慣れた名前を見て一気に目が覚めた。
「藤田深志、どうしてやっと電話をくれたの?」
鈴木之恵の焦りを含んだ怒鳴り声に、相手はしばらく黙っていた後、
「之恵、昨日は少し忙しくて、ずっと問題を処理していたんだ。心配してくれたの?」
鈴木之恵は涙をぬぐった。今の気持ちを言葉にするのは難しかった。彼が無事だと聞いて、張り詰めていた神経が緩み、思わず悔しさがこみ上げてきた。
「いつ東京都に戻ってくるの?」
「しばらくしてからかな。こちらの問題はかなり厄介で、そう簡単には片付かないんだ。」
鈴木之恵の声には鼻にかかった音が混じっていた。
「藤田深志、何か起きたけど私に言えないことがあるんじゃないの?何事も隠さないって約束したじゃない。」
藤田深志は低く笑った。
「そんなことはないよ。しばらくしたら東京都に戻って会いに行くから、変なことを考えないで。」
「わかった、じゃあビデオ通話して、見せて。」
電話の向こうで、藤田深志はまた固まった。しばらくしてから無理に明るく言った。