鈴木由典はドアをノックして入ってきた。
「おばあちゃん、もうこんな時間ですよ。まだ寝ないと、また不眠になりますよ」
老婦人は彼を一瞥して言った。
「今寝たところで眠れると思うのかい?」
眠れないくらいなら、ここで子供を見守っていた方が心が落ち着く。
年を取ると、まるで子供のように、駄々をこねると手がつけられなくなる。鈴木由典は困った表情で言った。
「おばあちゃん、早く寝てください。明日、一緒にバリーを病院に連れて行かなければならないんです。それとも明日は行かずに、家で寝ていますか?」
老婦人はしばらく考えてから、不機嫌そうに言った。
「わかったわ、寝るわよ」
この小僧はいつも彼女をうまくあしらう方法を知っている。そして彼女はそれに抗えない。
老婦人が去ると、部屋には兄妹だけが残った。
この二日間の付き合いで、二人はすでに打ち解けていた。バリーは口を開いた。
「お兄さん、之恵は寝ましたか?少し話がしたいんですが」
「呼んでくるよ」
その時、鈴木之恵は藤田深志に電話をかけていた。前回通じた後は、もう誰も出なくなっていた。再びかけると話し中の音がした。
鈴木之恵はぼんやりと座っていた。ドアは半開きで、鈴木由典が数回ノックし、ドアを半分開けた。
「之恵、バリーが呼んでるよ」
鈴木之恵は鈴木由典を見て、言いかけて止めた。
彼女には藤田深志と兄が共謀して彼女に隠していることが何なのか理解できなかった。
ちょうど彼女もバリーのところに行って情報を探りたいと思っていた。
「今日は私が彼女と一緒に寝るから、あなたたちは気にしないで」
鈴木由典はうなずいて言った。
「うん、姉妹で絆を深めるといい。でも長く話さないで、休息を取ることを忘れないでね」
「わかってるわ。お兄さんも早く休んで、この数日間疲れたでしょう?」
「疲れてないよ。じゃあ先に部屋に戻るね。長く話さないように、明日は専門医との約束があって、病院に行かなければならないから」
「わかってるわ」
鈴木由典は何度も念を押してから部屋に戻った。
鈴木之恵はパジャマ姿でバリーの部屋に来た。バリーは彼女が入ってくるのを見て、少し横にずれ、大きなベッドの半分を空け、彼女をベッドに招いた。