彼女の唇がキスしようとした瞬間、突然、ドンという音とともに、藤宮清華が車椅子から転倒した。
「夜帰るから、おとなしく家で待っていて」
結城暁は彼女の耳元でそう言うと、彼女を押しのけ、藤宮清華を助け起こしに走った。「痛くない?どこか怪我してない?」
「足が痛いわ」
藤宮清華は弱々しく、泣きそうな様子を見せた。
結城暁は彼女を抱き上げて車椅子に座らせ、しゃがんで直接足首をマッサージし始めた。
なんて仲睦まじい光景だろう!
南雲泉はどんなに強い心の持ち主でも、これ以上見続ける勇気はなかった。
彼女は背を向け、二人を一瞥もせずに前へ歩き出した。
突然、手首を掴まれた。
結城暁は「矢」のように彼女の前に飛び出してきた。「さっき言ったこと聞いてた?」
「聞いてたらどうなの?聞いてなかったらどうなの?」