第35章 南雲泉、私が養える

結城暁は彼女に薬を塗る手を、突然止めた。

しかし、それはほんの数秒で、すぐに彼の表情は自然に戻った。

低い声で、いつものように冷静に「君は既に私が君と結婚した目的を知っているだろう?」

案の定、南雲泉の胸に引っかかっていた息が急に下りた。

予想通りの答えだった。

期待するべきではなかったのに、それでも聞かずにはいられなかった。

今、答えを知って、より明確になった。もう非現実的な幻想は抱かないだろう。

だから見て、これだけの事実が彼女に告げている。

彼女は間違っていた。

それも大きく間違っていた。

これほど長い年月、彼が愛していた人は藤宮清華で、藤宮清華だけだった。

おそらく藤宮清華が帰国した瞬間から、彼が離婚を切り出した瞬間から、彼女の夢は砕けていた。

地面に落ちて、粉々になった。