病室の光景を見た南雲泉は、怒りで拳を握り締めた。
全身が怒りに震えていた。
柏木邦彦はベッドに寝そべり、足を組んで、片手に酒を持ちながらテレビを見ていた。まるで休暇を楽しんでいるかのようで、病人らしい様子は微塵もなかった。
南雲泉が入ってくるのを見ると、すぐに酒瓶を置き、にこやかに言った。「可愛い娘よ、お父さんをずいぶん待たせたね。やっと来てくれたか。」
「柏木邦彦...」南雲泉は抑えきれずに叫んだ。「人としての良心はないの?病気だったんじゃないの?今の様子を見る限り、すこぶる元気そうじゃない。」
柏木邦彦はすぐさま胸に手を当てた。「あいたた、痛い、胸が痛い。早く、早く医者を呼んでくれ。」
「芝居はやめて。」
「何ともないなら、私は帰るわ。」
そう言って、南雲泉は一刻も留まりたくなく、すぐに外へ向かった。
しかし、そのとき、入り口に立っていた数人の屈強な男たちが突然彼女を遮った。
「柏木邦彦、これはどういうこと?」南雲泉は振り返り、怒りを込めて彼を見つめた。
柏木邦彦は両手を広げ、へつらうように説明した。「泉、お父さんだってこんなことしたくないんだ。でも仕方がない、借金があるんだ。お父さんの分を返してくれないか?」
今になって情に訴えてくるなんて。
以前、あちこちで金を借り、賭博に明け暮れ、毎日酒びたりで酔いつぶれていた時は?どうして彼女と母親がどう生きていくのか考えなかったの?
「泉、私がどんなに間違っていたとしても、お前の父親だ。今、お父さんが困っているんだ。本当に見捨てる気かい?」
「ふん...」南雲泉は彼を見つめ、冷たく笑った。「今更、私の父親だって?」
「でも、心に手を当てて考えてみて。私が生まれてから、一日でも父親としての責任を果たしたことがある?」
「私が病気になって、熱を出した時、あなたはどこにいたの?」
「母が疲れて倒れて、家で気を失った時、あなたはどこにいたの?」
「私たちが借金取りに追われて、ネズミのように逃げ回っていた時、あなたはどこにいたの?あの時はどうして父親として、私たち母娘に責任を持とうと思わなかったの?」
南雲泉は話すほどに興奮していった。
最後には、自分の感情をほとんど抑えられなくなっていた。