「うん、彼だよ」
桐山念は瞬きをして言った。「この世界って、小さいと思わない?」
「そうね、小さいわ」
小さすぎて、彼女と念が探していた人が、同じ世界の、しかも親しい友人同士だったなんて。
突然、空に華やかな花火が咲き誇った。赤、黄、緑と、一束一束が美しく輝いていた。
二人は砂浜に座り、空に上がる花火を見上げていた。
「泉、きれいだと思う?」桐山念が尋ねた。
「うん、きれい」
彼女にはわかっていた。この花火は、きっと念が彼女のために特別に打ち上げたものだと。
彼女の悲しみを忘れさせ、悩みから抜け出させ、早く元気になってほしいという願いを込めて。
でも、誰も物語の最後に、二人とも憂鬱になってしまうとは予想していなかった。
夜、二人は砂浜でお酒を飲んでいた。おつまみもなく、ビール瓶を水のように、一本また一本と飲み干していった。