第151章 泉よ、私が誰か見極めて

一方、園田燈子は自分の言い訳が通用しないことを悟り、最後には腰を曲げて頭を下げ謝罪するしかなかった。「司社長、申し訳ありません。私が嘘をつきました」

司瑛人は彼女を無視し、桐山念を抱きかかえたままエレベーターに乗った。

園田燈子だけが玄関で気まずそうに立ち尽くしていた。

そのとき、桃子が申し訳なさそうな表情で駆け寄り、おずおずと尋ねた。「燈子、どうしましょう?念さんがこんな状態で、司社長は怒るでしょうか?」

「念に怒るかどうかは分からないけど、私たちには既に怒っているわ」と園田燈子は言った。

そう言って、頭を掻きながら続けた。「私たちのことはどうでもいいけど、念に影響が及ばなければいいの」

「司社長は念さんのことをあんなに愛しているから、大丈夫でしょう」

園田燈子はため息をつき、芸能界の恋愛を数多く見てきた。

真実と嘘、嘘と真実、誰にも見分けがつかないものだ。

彼女の願いはシンプルで、ただ念が傷つかないことを願うだけだった。

南雲泉の荷物を取りに行く暇もなく、結城暁は彼女を抱きかかえて自分の部屋へ向かった。

泉が酔いつぶれているのを見て、結城暁は彼女をベッドに寝かせた。

服を脱がせてお風呂に連れて行こうと手を伸ばした瞬間、彼の指が止まった。頭の中で現実に気づいた。今の彼らには、もう何の関係もない。

もう夫婦ではないのだから、どうして彼女を風呂に入れることができようか。

そこで、結城暁は南雲泉を風呂に入れる手伝いをしてくれる人を探しに立ち上がろうとした。

しかし立ち上がった途端、南雲泉が手を伸ばし、白い細い指で彼のネクタイを掴み、突然彼を自分の方へ引き寄せた。

結城暁は不意を突かれ、彼女に引っ張られて南雲泉の目の前まで顔を寄せることになった。

瞬時に、二人の呼吸が重なり、鼻先も触れ合った。

鼻先がほんの少し触れただけだったが、彼女の眉目、特に鮮やかな色の、ぷっくりとした唇を見つめていると、結城暁の心は激しく動揺した。

彼は認めた。心が乱れていた。

それも完全に。

おそらく酒のせいで、南雲泉は熱くてたまらなかった。

彼女は手を伸ばし、身につけている服を引っ張りながら、むやみに軽く唸っていた。

何気なく唸っているだけなのに、彼女の口から漏れる声は、今の結城暁にとって致命的な毒薬となっていた。