第159章 2人が同時に南雲泉を救いに来る

「泉!」

声を上げると、瀬戸奏太はすぐに走り寄った。

柏木朋也も急いで追いかけた。

誰かが来たのを見て、周りの数人の男たちは一瞬警戒したが、それでも傲慢な態度で言った。「お前ら誰だ?余計な事に首を突っ込むなよ。ヒーロー気取りは止めとけ」

「柏木」奏太が声をかけ、目配せをした。意図は明確だった。

「はい、ボス。お任せください」

数分もしないうちに、男たちは全員地面に転がっていた。

恐怖で、泉はまだ先ほどの場所に縮こまっていた。自分を抱きしめ、まるで哀れで無力な小さな白うさぎのように見え、見る者の心を痛ませた。

瀬戸奏太が彼女を見た時、胸が突き刺されたように痛んだ。

彼女は目を赤くし、小さく丸まって自分を抱きしめ、全身が震えていた。

瀬戸奏太は近寄り、彼女を立たせようと手を伸ばした。

突然、泉は激しく震え、必死に後ずさりしようとした。

目を閉じたまま、心の中には恐怖しかなかった。

瀬戸奏太はすぐに理解した。この出来事で彼女はトラウマを負ってしまったのだ。

彼はしゃがみ込み、優しい声で話しかけた。「泉、目を開けて。私は瀬戸奏太だよ。あいつらはもういない。助けに来たんだ」

瀬戸奏太?

彼?

でも、どうしてここに?

泉は少し信じられない様子だった。

彼女の疑いを察して、瀬戸奏太は真剣に説明を続けた。「本当に瀬戸奏太だよ。目を開けて確かめてごらん」

今度は、泉はそっと目を開けた。慎重に、最初は細い隙間だけ開け、目の前の人を確認できてから、やっと大きく目を見開いた。

すぐに、彼女は目を大きく見開き、まるで水から引き上げられたかのように澄んでいた。

彼女が目を開いたまま何も言わないのを見て、瀬戸奏太は心配そうに呼びかけた。「泉……」

しかし、彼が名前を呼んだ途端。

突然、泉の目から予告もなく涙が落ち始めた。一滴、二滴……そして連なって流れ出した。

「うぅぅ……」次の瞬間、彼女は声を上げて、大きく、思い切り泣き出した。「怖かった、本当に怖かった」

「やっと助けに来てくれた」

彼女は泣きながら、瀬戸奏太に飛びつき、その胸に顔を埋めた。

小さな手で彼をしっかりと抱きしめ、まるで置いていかれることを恐れているかのように。

「あの人たち怖かった、本当に怖かった」

「助けてくれてありがとう!」