「暁……」
南雲泉はもう一度呼びかけた。
しかし、リビング全体は相変わらず空っぽで、誰もいなかった。
南雲泉は信じられず、トイレに行き、バルコニーに行き、キッチンにも行ったが、結果は全て同じだった。
どこもかしこも空っぽで、彼の影すら見えなかった。
全ては本当に夢だったのだろうか?
今、目が覚めたのだから、現実を受け入れなければならない。
南雲泉の心は一瞬で沈み、気分も悪くなった。
やはり彼女は取り憑かれていたのだ。夢をこんなにも鮮明に思い描いてしまうなんて。
手を伸ばし、自分の唇に触れた。
昨夜、彼らは何度もキスをした。特に最後の二回は、彼はとても熱く、切なく、狂おしいほどにキスをしてきた。
彼女はまだその柔らかく密やかな感触を覚えていた。彼の熱い息遣い、セクシーな声、情熱的な時の低い声も覚えていた。しかし、その記憶がどんなに鮮明でも、全ては偽りだった。