「暁、どこへ行くの?」
「傷がまだ治っていないわ、暁、ゆっくり行って」
結城暁が大股で出て行くのを見て、藤宮清華は慌ててすぐに車椅子を押して追いかけた。
一方。
南雲泉は完全にパニック状態だった。
また5回電話をかけたが、誰も出なかった。
彼女は落胆して携帯を置き、顔には明らかな心配と失望が浮かんでいた。
彼女の表情を見て、桐山念はすぐに理解した:「まだ誰も出ないの?」
「うん」南雲泉は落ち込んで頷いた。
今や彼女は途方に暮れ、完全に取り乱していた。
「念、もう二日よ。電話も出ないし、LINEもメールも全然返信がないの。何か起きたんじゃないかしら?」
一度そう考え始めると、南雲泉はますます焦りを感じた。
そして考えれば考えるほど不安になり、全く落ち着くことができなかった。
「彼はいつも慎重で、仕事も真面目だから、理由もなくこんなに長く連絡が取れないなんてことはないはず」
「彼と親しい他の人に連絡を取ってみた?それとも結城暁が他の人に連絡を取ったとか?」桐山念は提案した。
「桐山翔には連絡したけど、翔も連絡が取れないって。お父さんお母さんには、もっと聞けないわ。もし万が一本当に何かあったら、両親はきっと耐えられない、状況はもっと悪くなるわ」
「だめ、念、もうここでじっと待っているわけにはいかないわ。海外に行って、彼を探すわ」
南雲泉は言いながら、荷物をまとめて海外に行く準備をしようとした。
桐山念は南雲泉の肩に手を置き、落ち着かせようとした。
「はいはい、泉、慌てないで。今焦っても何も解決しないわ。もう一度整理してみましょう。いつから結城暁と連絡が取れなくなったの?その時何か兆候はあった?」
南雲泉は懸命に思い出そうとして、答えた。
「二日前の午後よ。彼は私が勇家院長にセクハラされたことを知って、ビデオ通話で慰めてくれたの。私たちはとても良い話をして、それから私は少し寝て、目が覚めたら連絡が取れなくなっていたの」
何かを思い出したように、桐山念の胸が締め付けられた。
つまり、あの夜、彼女が結城暁と最後に連絡を取った人だったということだ。
なぜか、彼女の頭には結城暁の部屋のノックの音と、その時電話で言った言葉が突然よみがえった。
また来たのか?
また?
結城暁がその時言った人は一体誰だったのだろう?