彼のキス、とても熱く情熱的だった。
南雲泉は自分が彼に飲み込まれそうな感覚に陥った。
普段なら、きっと恥ずかしくて気まずい思いをしただろう。
でも今は、そんなことを気にする余裕はなかった。何も考えられなかった。
ただ、彼と離れたくない、今この瞬間も自分をしっかりと抱きしめてくれているこの男性と離れたくないという思いだけだった。
どうしよう?まだ離れてもいないのに、もう恋しくなっている。
もはや遠慮なんてなく、南雲泉は手を伸ばし、結城暁をきつく抱きしめた。まるで彼の骨の髄まで溶け込みたいかのように。
そうすれば、失うことへの恐れも、恋しさも少しは和らぐかもしれないと思って。
なぜだか最近、自分が物思いにふけりやすくなったように感じていた。
そして、手を離せば彼が去ってしまうような気がしてならなかった。
キスの最後に、南雲泉は気づかないうちに涙を流していた。
唇から苦い味が伝わってきて初めて、結城暁は抱きしめている人が泣いていることに気づいた。それも、まるで天にも届くような大きな不当を受けたかのように、とても悲しそうに。
「泣かないで」抱擁を解きながら、結城暁は心痛めて南雲泉の頬の涙を拭い、愛おしそうに慰めた。
「長くはいないよ。約束する、用事が済んだらすぐに戻ってくる。すぐだから。帰ってきたら一緒に火鍋を食べよう」
「それに私の大好きなスイーツも。メリーゴーラウンドと観覧車にも乗せてね」南雲泉は話すほどに、涙が激しく流れた。
結城暁は身を屈めて、一つ一つ丁寧にキスで拭い取った。
「ああ」彼は心痛めながら頷いた。「泉の言う通りにしよう。僕が戻ったら、全部一緒に行こう。全部約束を果たすよ」
「じゃあ、約束を忘れちゃダメよ。嘘をついちゃダメ」
南雲泉は涙にくれ、彼は本当に離れがたかった。
千の別れ難さ、万の別れ難さ。
しかしその時、誰も知る由もなかった。
ある約束は、永遠に約束のままで。
二度と果たされることのない日々が来ることを。
南雲泉は思った。もしあの時、予知能力があって、あることが起こると分かっていたら、死んでも彼をここから離さなかっただろうと。
結城暁もまた、もしあの日が来ることを知っていたら、きっと南雲泉の側にいて、どこにも行かなかっただろう。
でも、人生には何でもあるけれど、もしもだけはない。