高橋真子は彼が何をしようとしているのか分からなかったが、ただ押されるままに階段を降り、一台のランドローバーの前まで来た。
「お前の主人をちゃんと病院まで送れ。他の件は後日改めて清算する」
藤原月はそう言って詩織を車に乗せ、ドアを閉めると大股で高橋真子の方へ向かった。
高橋真子はそこで初めて、藤原月が詩織の部下がここにいることを知っていたことを知った。
高橋真子は実は最初は気にしていなかった。
詩織は彼女に藤原月と離婚してほしいだけで、離婚さえすれば詩織は彼女につきまとうことも、彼女を探すこともなくなるはずだった。
しかし藤原月が彼女の前に来て、また彼女の手を掴んだ。「行くぞ!」
「手を掴まないで、自分で歩けます!」
高橋真子は前に進まず、ただ彼に注意を促した。
藤原月は彼女を見つめ、すぐに彼女を抱きしめた。「まだ離婚していない」