第23章 彼は「もう追い詰めないで」と言った

「真子、どうしてここにいるの?伊藤社長と一緒に?まさか、噂通りなの?あなた、何を考えているの!」

詩織は藤原月の腕を離し、高橋真子の側に歩み寄って、真剣に忠告した。

高橋真子は俯いたまま、冷たくなった小指を触りながら微笑んだ。「たまには馬鹿になるのもいいでしょう!用事があるので、先に失礼します!」

「真子!」

背後から突然、怒りに満ちた声が響いた。

高橋真子は立ち止まらなかったが、その声の主が追いついて彼女を掴んだ。

「二人で詩織を送り届けろ!」

藤原月は冷たく命じると、高橋真子を先ほどの個室へと連れて行った。

ドアが内側から強く閉められ、高橋真子は壁際に追い詰められた。

詩織はそれを見て即座に怒りを露わにし、前に出ようとしたが、佐藤正臣と須藤陽太に阻まれた。

「一体何がしたいんだ?」