第120章 あなたを救った代償として、今夜は帰さない

高橋真子は彼が何を見たのか気づき、あの時なぜ個室に戻って斎藤社長を探しに行ったのかも分かったが、それでも恥ずかしさを抑えられなかった。「藤原月、見ないで」

「誰が怪我をさせたんだ?」

彼は彼女の背後に寄り添い、耳元で問いただした。

高橋真子は心が乱れていた。自分は十分に惨めなのに、彼はまだ彼女を責めるのか?

「他にどこか怪我してるのか?自分で言うか、それとも俺が続けて脱がすか?」

藤原月は彼女の返事を待たずに、さらに問いかけた。

「言います、言います!」

高橋真子は彼がさらに脱がそうとするのを聞いて、急いで叫んだ。

藤原月はようやく彼女の上から離れたが、表情は依然として冷たかった。

高橋真子は痛みを堪えて起き上がり、手のひらを広げた。「ここが一番ひどくて、血が出てます!」

藤原月は彼女の手のひらの血を見て、冷たい指で彼女の怪我した側を掴み、思わず力を入れた。

高橋真子は痛みを堪えながら彼を見上げた。「また恩を受けることになりましたね」

恩?

藤原月は彼女を見上げ、見れば見るほど怒りが込み上げてきた。

高橋真子はさらに言った。「でも、そんなに強く握ったら、私の手が使えなくなって、料理も作れなくなりますよ」

「俺が料理を作る人が必要だと思うのか?」

藤原月は問いただしたが、彼女の手を握る力は緩んでいた。

「じゃあ、なぜ私に料理を作らせるんですか?」

危険から逃れた安堵感で、彼女は今とても落ち着いていて、思わず彼と言い争った。

「それは...自分で考えろ」

藤原月はそう言いながら、ドアの音を聞いて立ち上がって出て行った。

高橋真子は彼の高い背中が出て行くのを見上げながら、心の中で少し安堵した。彼が時間通りに来てくれなかったら、小林輝に散々に殴られていたかもしれない。

小林輝がこんなに早く本性を現すとは思わなかった。わざわざ斎藤社長を探してきたなんて、一体何を企んでいるのだろう?

高橋真子は目上の人を邪悪な考えで見たくなかったが、彼はもう目上の人ではないことを忘れていた。

彼は一人の成人した、金持ちの男性として彼女の前に現れた。

彼女を藤原月と離婚させ、自分の娘を藤原家に嫁がせるために、彼女を誘惑し、誘惑が失敗すると暴力に訴えた。

考えてみれば、そういうことだ。