高橋真子は老夫人を宴会場の入り口まで支え、その後、藤原月と一緒に後ろに下がった。
老夫人は老夫の腕を抱き、夫婦は互いに支え合いながら先に入っていった。
藤原月は自然に腕を外側に向けた。
高橋真子は彼の肘が自分の肌に触れるのを感じ、目を伏せて見つめ、そしてゆっくりと彼を見上げた。照明の下で彼は一層際立って格好良く、しかし彼女は「私たちはそこまでする必要はないでしょう」とだけ言った。
彼女は小走りで前に進み、追いついた。
藤原月は失望して冷笑した。彼女が素直に従うはずがないと分かっていた。
しかし彼女がどう思おうと、今夜だけは。
老夫婦は宴会場前方のステージに立ち、設置されたマイクの前に立った。老夫が最初に声を上げた。「本日は皆様お忙しい中、私の八十八歳の誕生日にお集まりいただき、まことにありがとうございます。ここで、我が家の皆が恐らくすでにご存知の喜ばしいお知らせをさせていただきたいと思います。」