返信はずっと来なかった。
彼はまだ気ままに楽しんでいて、携帯の電源も入れていないんだろうと思った。
義父が亡くなった後、皆が後事の手配に追われ、義母はショックで寝込んでしまい、私が家の唯一の支柱となった。
藤原誠に連絡を取ろうとしても、つながらない。
家で義父の古希のお祝いのために用意していた飾り付けも全て撤去され、赤い絹布は白い絹布に、赤い提灯は白い提灯に変わった。
海外にいた次男の藤原健一も帰国し、父の棺の前で号泣していた。
「父上の最期に会えなかった...父さん!お父さん!」
この次男は、ずっと海外にいたが、私の印象は悪くなかった。特に彼の留学費用は全て私が出したこともあり。
だから私のことをとても敬っていた。
「お姉さん、兄さんはどこですか?こんな時に、なぜいないんですか?」
私は何と言えばいいのか分からなかった。彼が愛人と遊び回っているなんて、どうして言えるだろうか?
そのとき、藤原誠がようやく携帯の電源を入れ、私のメッセージに冷たく返信してきた:「いいよ、離婚しよう。」
しばらくして、彼から電話がかかってきた。ちょうど弟も側にいた。
弟が兄と話したがったので、スピーカーフォンにした。
「どうして父さんの電話がつながらないんだ?一体何をしているんだ?父さんに伝えてくれ、俺と美咲ちゃんが贈り物を持って誕生日のお祝いに来たって。」
藤原健一は呆然としていた。
「お姉さん、どういうことですか?兄さんは何を言っているんですか?」
私は突然、心が疲れ果てた。
黙って聞いていて、彼と話す気にもなれなかった。
藤原健一も何か様子がおかしいことに気付いたようだ。
「聞いているのか?」
電話の向こうで彼の声は再び苛立ちを帯びてきた:「父さんに伝えてくれよ。言っておくけど、離婚するにしても、父さんの古希のお祝いが終わってからにしろ。父さんを怒らせるなよ。」
今になって急に親孝行になったものだ。
一日一晩何も食べていなかったので、私の喉は枯れて声も出なかった。
心身ともに疲れ果てていた。
藤原健一が私の代わりに口を開いた:「兄さん、どこにいるんですか?」
「おお、拓くんが帰ってきたのか。よかったよかった。兄さんもすぐ帰るよ。久しぶりだな、会いたかったよ。」
藤原健一が答える前に、私は電話を切った。今では藤原誠の声を聞くだけで吐き気がする。
「お姉さん?兄さんと何かあったんですか?」
「話したくないわ。聞かないで。」
私は携帯の電源を切り、祭壇の準備を続けた。どんなことがあっても、義父を最後まで送り出し、安らかに旅立ってもらいたかった。
藤原健一は私の様子がおかしいのを見て、それ以上追及する勇気がなく、ただ側で手伝いを続けた。
義父の遺品を整理していると、思い出が蘇り、義父との楽しかった日々や、息子に最後に会いたがっていた姿を思い出した。
私はまた涙が止まらなくなった。
そのとき、義母が私を慰めに来て、かえって前向きに考えるように言い、これからも娘のように思っていると言ってくれた。
そして義父の遺言書を取り出し、私宛てのものだと言った。私は内容を見て、すぐに辞退しようとした。
ちょうどそのとき、藤原誠が彼の運命の人と手を繋いで帰ってきた。田中美咲は派手に着飾っていた。家に入った瞬間、彼の表情が変わった。
親戚や友人たちが皆、悲しげな表情で、黒い服に白い装飾を身につけ、彼が掛けたはずの赤い絹布も白い絹布に変わっているのを見て。
「何をしているんだ!森川雅子!出てこい!何をしているんだ!父さんはどこだ!」
私が喪服姿で出ていくと、目の前には派手なスーツを着た藤原誠と、真っ赤な肩出しワンピースの田中美咲がいた。周りの人々は目立つ姿に思わず私語を交わしていた。
藤原誠は祭壇の前にある義父の棺と遺影を見て、ようやく全てを理解したようで、豚の肝のように青ざめた顔をした。
後ずさりを繰り返す。
「いや、そんなはずはない...お前たちが嘘をついているんだ。森川雅子!言え...父さんがどうして死ぬんだ?お前が殺したんだろう!」