医者が退院を急がないように注意していたにもかかわらず、田中母は当日退院するように言い渡していた。
もちろん、迎えに来る人もいなかった。田中元は仕事に行っており、午後に区役所で待ち合わせると言っていた。
私は持っている2着の服と薬を持って、慎重に病院の出口を出た。すると、背の高い若い男の子に出会った。肌が白くて、体格がよかった。
「徳永お姉さん、荷物を持ちましょうか。」
私は警戒しながら彼を見つめたが、どこか見覚えのある声だと思った。しばらくして思い出した。「あなたは...松本くん。」
「はい、徳永お姉さん、私が警察に通報したんです。どうして警察に真実を話して、彼らを全員逮捕させたんですか。」
まさか私のために通報してくれたのが彼だったとは。気を失う前に助けてくれたのが、こんな高校生だったなんて。松本くんは隣に住む17歳の少年で、以前はよく田中元の後をついて遊んでいた。