「余計なことを言うな。母親が息子に害を与えるわけがないだろう。県の加藤お嬢様がまだお前を狙っているじゃないか。すぐに離婚すれば、あの子はお前に誰も寄り付かないと思っているだろうけど、今この子がいることで危機感を感じさせられる。それに、この娘はもう私が手なずけたわ。ちゃんと借用書にサインまでさせたのよ。離婚したら両親からお金を取れるわ」
田中母の言葉に田中元は逆らえなかった。
「母さん!離婚しないで雪ちゃんにどう説明すればいいの?」
「本当に馬鹿ね。山本艶子があなたに執着して死にものぐるいだったから、見捨てられなかったって言えばいいのよ。そうすれば、あの子はあなたが情に厚い人だと思って、もっと好きになるわ」
田中元はそれが理にかなっていると思い、私が素直で従順なのを見て、次第に警戒心を解いていった。私も自分の計画を始めた。