第2章

高橋愛という名前は私がつけたもので、彼女が一生健康で、無事に過ごせることを願ってのことでした。

しかし、願いとは裏腹な結果になってしまいました。

私は彼女の平安を願ったのに、狼を家に招き入れ、彼女の人生を台無しにしてしまったのです。

「パパ、ママ!」

今の愛はまだ木村文雄と出会っておらず、彼に騙されてもいません。

彼女はまだ素直で、優秀で、活発な子供です。

前世では、一人の男のために両親を裏切った彼女を恨んだこともありました。

でも考えてみれば、彼女も被害者だったのです。

前世では、木村文雄は大学で彼女を妊娠させながら知らんぷりを決め込み、彼女は病院で中絶する勇気もなく、お腹が日に日に大きくなるのを見守るしかありませんでした。

結局、早産で、寮で死産児を産みました。

元々私と安田浩二は二人の結婚に反対していましたが、木村文雄が彼女にどんな甘い言葉を囁いたのか、彼女は人生で自分を愛し、大切にしてくれるのは木村文雄だけだと思い込んでしまいました。

しかし、口では愛していると言いながら、結婚後は浮気を重ね、その結果、彼女は精神を病み、精神病院に入院することになりました。

元々裕福な家庭で育った愛されし娘が、男の甘い言葉に騙され、愛する両親と心が離れ、自分の学業と夢を捨て、一歩一歩死の淵へと近づいていったのです。

最後になって初めて分かったことですが、愛が退学したことの裏にも木村文雄の画策があったのです。

彼女が期待した恋は、最初から周到に計画された罠だったのです。

「ママ、どうして泣いているの?」

細い手で私の涙を拭う彼女の目には、心配の色が満ちていました。

まだ良かった。今の彼女はまだ私の愛です。今世では、必ず彼女を本当の意味で平安に導いてみせます。

「ママはただ愛のことを考えていただけよ。」

私は彼女をしっかりと抱きしめ、もう一度やり直すチャンスをくれた天に感謝しました。

木村文雄のことですが、今頃はお金を手に入れて喜んでいることでしょう。

そう、今のうちに存分に喜んでおけばいい。

なぜなら今日を過ぎれば、もうこんな楽しい日々は二度と来ないのだから。