第11章

話したことのない高橋一郎は、私が息子にこんな酷い言葉を投げかけるのを見かねて、高橋知明を助け起こしに来た。

「佳奈、どうして息子にそんな言い方ができるの?」

私は本当に言葉を失った。付き合い始めた頃、彼はこうやって私を呼んでいた。

でも、そのうち呼ばなくなった。

名前すら呼ばなくなった。

毎日私に向かって言うのは「首」という二文字だけ。

あんなにも露骨に私を血液パックのように扱っていたのに、どうして気づかなかったのだろう。

今またこの呼び方で私を不快にさせようとしているの?

「あなたも黙りなさい。あなたの方が吐き気がする。自分が何をしたか、自分でわかっているでしょう」

私は乱暴に高橋知明を引っ張って、渡辺依子に謝らせようとした。

高橋知明は悲しそうな目で私を見て、むせび泣きながら言った。