次の日目が覚めると、隣にいた人はもういなかった。
会社に行ったのだろうと思い、今日は離婚の計画をしっかり立てようと決めた。
しかし、階下に降りると、エプロン姿でキッチンから料理を運んでくる人影に驚いた。
「起きたか。朝ごはんを食べに来なさい」
前世では、河村隆一が料理をする姿など一度も見たことがなかった。
料理をするのはまだいいけど、なぜ...上半身裸なの。
エプロンの下から筋肉の輪郭が透けて見え隠れし、喉が妙に乾いた。
彼の熱い視線を避けるように俯き、緊張しながら向かい側に座った。
目の前に置かれたお粥を無視して、冷たく切り出した。「食欲ないわ。離婚の話がしたいだけ」
時系列的には、まだ浮気はしていないけど、早めに防ぐ必要がある。
できることなら、今生はあの女とは一切関わりたくない。
森川麗子は今日、彼の会社の面接に合格するはず。
その後、彼女は私に近づいて友達になり、表向きは私と河村隆一を結びつけようとしながら、裏では密会を重ね、最後には私を死に追いやった。
考えれば考えるほど腹が立ち、向かい側の男の顔にお粥をぶちまけたい衝動に駆られた。
「ダメだ。俺はお前が好きだ。離婚なんてありえない」
「え?」
突然の直球に言葉を失った。
転生した瞬間から、すべてが前世の展開とは違っていた。
「先に食べろ。お腹を空かせるな」
河村隆一は親切に微笑みながら、私の驚いた目の前にカードを2枚押し出した。
「ここに約30億ある。とりあえずこれを持っておけ。数日後に弁護士を寄越して、俺の全財産を清算して渡す」
食事の間、何度も離婚を迫ったが、すべて軽々と拒否された。
食後、スーツをビシッと決めて人並みの格好をした男が階段を降りてくるのを見て、私は完全に怒り出した。
いいわ、手放したくないなら、お互い良い思いはさせない。
彼と森川麗子を順調に進展させるつもりはない。
出かける直前、私は彼を呼び止めた。
「秘書を募集してるって聞いたわ。私もあなたの会社で働くわ!」