第3章

車に座ると、何か違和感を覚えた。

要求を口にした瞬間、この男の目が輝いた。

しっぽがあれば、きっと天まで跳ね上がっていただろう。

彼を不快にさせるどころか、むしろご褒美をあげているようだった。

車は河村グループのビルまでスムーズに走り、私を待っていたせいで彼は遅刻した。エレベーターで最上階に着くと、今日の面接者の資料が彼に渡された。

一番上に置かれていた森川麗子の名前を見た瞬間、感情を抑えるために服の裾をきつく握りしめた。

「こちらの方は？」

木村秘書は彼の後ろにいる私を不思議そうに見た。

「彼女は私の妻...」

「新しい秘書です！」

冗談じゃない、私は彼の妻なんて認めない。彼より先に自己紹介を済ませ、挑発的な視線を投げかけた。

一瞬の寂しそうな表情の後、河村隆一は認めた：「そうだ、秘書だ。」

「では、この方々との面接はどうしましょうか？」

「もちろん面接します！」私が彼の代わりに決めた。

「私一人で河村社長のお世話なんて足りないでしょう。仲間が必要ですよね。」

私の言葉で雰囲気は完全に壊れ、周りの同僚たちの河村隆一を見る目も意味深なものになった。

結局、面接は予定通り進められ、私も会議室に同席した。

森川麗子が入ってきた瞬間、私は血が逆流するような怒りを感じ、手に持っていたペンを折りそうになった。

深呼吸をしている間に、もう片方の手が机の下で私の腰を抱き、グッと彼の方へ引き寄せられた。

椅子が擦れる音で、全員が彼の行動に気付いた。

吐き気を我慢しながら彼の腕を払いのけ、彼の目に浮かぶ私と同じような不安も無視した。

「河村社長、はじめまして。森川麗子と申します...」

流暢で自信に満ちた自己紹介。彼女はとても専門的に見えた。そんな偽りの姿に、私はより一層憎しみを感じた。

以前、私は彼女をとても信頼していた。結局、私は彼女と夫の幸せな恋を後押しするピエロになってしまった。

履歴書の端を握りしめてシワくちゃにしながら、社長である河村隆一が口を開く前に、私が越権行為を行った。

「森川さんは大学を卒業したばかりですが、どうしてこのポジションの採用要件を満たしているのでしょうか？」

彼女に聞くと同時に、この男にも問いかけた。

「河村グループの採用基準がこんなに低くなったとは知りませんでした。それとも河村社長が森川さんの特別な才能にご興味を？」

「河村グループは清掃員でも学士以上が必要と聞きましたが、今日は一体何の面接なんでしょうか？」

私がさらに言葉を続けようとした時、森川麗子は既に目に涙を溜め、可哀想そうに私を恨めしげに見つめていた。

「ストレス面接ですよ。森川さん、もうダメですか？」

「いいえ」森川麗子は声の震えを必死に抑えながら：「実は在学中の実習で...」

「疲れました。もう話す気になれません」私は彼女の言葉を遮った。「河村社長のお好きにどうぞ。」

会議室は静まり返り、全員が彼の反応を待った。

結局、誰も私のように河村隆一の前で「無礼」な振る舞いをする勇気はなかったのだ。

十分な驚きと同時に、彼の対応は私への偏愛を非常に明確に示すものだった。

「確かに適任ではないな。次の方を」