第11章

目が覚めると、体中が痛くて、隣には満足げな表情の男が横たわっていた。

彼の抱擁は暖かく、これが夢なのかと思ってしまうほどだった。

私の気配を感じて、河村隆一もすぐに目を覚ました。

「河村社長、遅刻しちゃいますよ!」

私は洗面所の鏡の前で肘で彼を突いた。この意地悪な人、身支度中も大人しくしていられない。

「行きたくないな。本田秘書と一緒にサボろうか。」

そう言いながら、彼は私の鎖骨に噛みついた。痛みはそれほどでもないが、跡は十分目立つ。

「まだ私を解雇してないんですか?」

私は一週間河村グループに顔を出していない。以前もあまり仕事は与えられていなかったとはいえ、やはり道理に合わない。

「なぜ解雇する?本田秘書、私はあなたが必要なんだ!」

この言葉の意味は、考えすぎてしまいそうだ。