第13章 人の捨てた中古品を拾う

フルーツコーヒーとケーキのおやつ、人気俳優との同席で、野村香織は夜まで座っていられると感じた。

もちろん、彼らには目的があった。誰かを怒らせること！

野村香織と小林輝明が一緒にゲームをしているとき、驚きの声が響いてきた。

「まさか、ありえない！」

「小、小林輝明さん？まさかあなたも写真展に来ていたなんて？」

野村香織と小林輝明は驚いて振り向くと、そこには関口美子がいた。

小林輝明のファンクラブの幹部として、彼女は小林輝明が灰になっても見分けられるほどだった。

小林輝明は口角を上げ、関口美子に軽く頷いて挨拶した。人気俳優として、礼儀は保たなければならなかった。

「夢を見ているんじゃないわ。私の個展に来てくださるなんて、ファンサービス最高です！」

そう言いながら、関口美子は小林輝明の手を掴もうとしたが、彼に押しのけられた。

「申し訳ありませんが、人前でこういった行為は私のイメージに良くありません」

小林輝明は冷たい声で言い、まるで渡辺大輔のようだった。

関口美子も自分の軽率さに気付き、すぐに謝罪した。完全なファン少女の態度だった。

突然、彼女は視界の端にソファーに座っている人物を見つけた。

「野村香織？！」

「あなたもなぜここに？」

関口美子の声色が沈み、顔には不快感が満ちていた。

野村香織は何も言わず、ただ微笑みながら彼女の振る舞いを見ていた。姿勢は優雅で、落ち着いていた。

「ねえ、野村香織、あなたに言ってるのよ。聞こえないふりしないで！」

「ここがどんな場所か分かってる？あなたが来ていい場所じゃないわ」

「あぁ、分かったわ。そんなにお洒落して、きっと大輔兄さんが来ると知って、復縁を迫りに来たんでしょう？本当に恥知らず！」

関口美子は激しく言い放った。

野村香織が渡辺大輔と結婚して以来、関口美子は彼女を宿敵とみなし、会うたびに容赦なく攻撃的な言葉を投げかけることが習慣となっていた。

優越感、強い優越感。野村香織に対して、関口美子はいつも優越感を抱いていた。

唯一彼女が劣等感を感じる点は、野村香織の容姿が彼女よりもはるかに上だということだった。

「安心して、私たちは既に離婚したわ。絶対に彼に執着したりしない。他人の捨てた中古品に執着するのは、あなたみたいな人だけでしょう」

野村香織は相変わらず優雅に座ったまま、関口美子の頭を割るような言葉を放った。

「ふん、しつこくても無駄よ。大輔兄さんと3年も結婚してたのに、結局振られたじゃない」

「警告しておくわ野村香織、もし復縁を迫りに来たのなら、さっさと帰りなさい。もし土下座して謝るなら、私から彼に一言言わせてあげてもいいわ」

「さあ、始めなさい！」

真っ向から対立し、関口美子は床を指差して、野村香織に土下座するよう促した。

その時、小林輝明が動いた。彼は野村香織の前に立ち、紳士的に手を差し出した。

「美しい野村香織さん、私たち行きましょう」

「どこからか蠅が来て、うるさく羽音を立てているようですね」

小林輝明は笑いながら、極めて優しい口調で言った。

野村香織は微笑みを浮かべ、軽く頷いて小林輝明の手に自分の手を添え、ゆっくりと立ち上がった。

この光景を見て、関口美子の表情は見物だった。

「あ、あなたたち知り合いなの？」

関口美子は信じられない様子で、小林輝明と野村香織が繋いだ手を見つめ、瞳孔が震えた。

小林輝明はサングラスを外した。「ああ、私は特別に香織ちゃんと展示会を見に来たんです」

「あ...あなたたち、ひどすぎる。こんなの許せない。これが本当だなんて信じられない！」

関口美子は受け入れられず、一時的に支離滅裂な言葉を発し、目が赤くなっていた。

幼い頃から写真一筋で、唯一追いかけてきたスターが小林輝明だった彼女は、小林輝明と野村香織が寄り添う姿を見て、人生が崩壊しそうな気分だった。

小林輝明と野村香織の噂は既に知っていたが、それはマスコミの悪意ある話題作りだと思っていた。人気俳優が金持ちの離婚女性に目を向けるはずがない？

関口美子は死んでも信じられなかったが、目の前の現実は彼女の頬を強く打ちつけた。

「輝明、行きましょう」

野村香織が言い、相変わらず優雅に微笑んでいた。

小林輝明は頷き、野村香織の手を取って外へ向かった。彼の目は愛情に満ちて彼女を見つめていた。

彼の目には、関口美子は狂犬のように映り、一瞥する価値もないと思われた。

「あ、あなたたち、ひどすぎる！」

「行かせない、絶対に行かせないわ！」

関口美子は叫び、まるで発狂したかのように、ヒステリックな様子だった。

小林輝明と野村香織は誰一人相手にせず、そのまま立ち去った。

この騒ぎは多くの人々の注目を集め、特にメディアは、スキャンダルの匂いを嗅ぎ取ったかのようだった。

小林輝明の姿を見たとき、彼らは完全に熱狂した！

因縁の相手は出会うものだ、たとえその因縁の二人が既に離婚していても。

野村香織と小林輝明は、出口近くで渡辺大輔と鉢合わせた。