第12章 人類高品質男性

翌朝、太陽がまだ眩しくない時、ロボットの小小に起こされ、野村香織は仕方なく起床した。

ネイル、ヘアセット、口紅、まつ毛メイク、丁寧に2時間かけてフルメイクを施した。

豊かな髪を優雅に結い上げ、かんざしを乱れた鬢に横たえ、ふんわりとした黒い大きなウェーブが背中に垂れ下がっていた。

黒いシースルーのドレスにレースの装飾、高貴で優雅で、神秘的な魅力を放ち、人々の興味を引きつけていた。

「小小、白、シルバー、黒、どれがいいと思う？」

野村香織は、クローゼットに並んだハイヒールを指さしながら尋ねた。

小小は答えた：「ご主人様、シルバーのハイヒールをお勧めします！」

「そうね、小小の言う通りにするわ！」野村香織は笑顔で言った。

小小と一緒に暮らすようになってから、この大きな別荘に一人で住んでいても寂しくなくなり、小小の世話にも慣れ、多くのことで小小の意見を求めるようになった。

小小は彼女を一度も失望させたことがなく、その点では元夫よりもずっと頼りになった。

別荘の外で。

近づいてくる野村香織を見て、小林輝明は目を見開いた。

「ピュー～」口笛の音が響いた。

「香織、僕の言うことを聞いて、芸能界デビューした方がいいよ。そうしないと才能の無駄遣いだ」小林輝明は冗談半分、本気半分で言った：「この若手イケメンは、正式に香織と付き合うことに決めました！」

野村香織は口を押さえて軽く笑った：「まあまあ、坊や、成人してるの？まだ恋愛なんて」

小林輝明はサングラスを外し、前髪をかき上げながら言った：「僕は本気だよ、冗談じゃない。考えてみてよ」

「若くて金持ち、イケメンで才能もある、僕は高スペック男子だよ！」

言葉が終わらないうちに、小林輝明は急速に二人の距離を縮め、星のように輝く瞳は幻想的な魔力を放っていた。

「ドキッ！」

心臓が一拍飛んだ。

小林輝明の攻撃は、野村香織の不意を突いた。不幸な結婚生活を終えたばかりで、まだその影から完全に抜け出せていなかった。

野村香織は小林輝明を避けて車に乗り込んだ。少なくとも今は何も答えられなかった。

「ぼーっとしてないで、早く出発しましょう！」

「へへ、了解！」

ブガッティのアクセルを踏み込み、電光石火のごとく走り去った。

野村香織が苦笑いしたのは、小林輝明が運転しながら歌を口ずさんでいて、その歌詞の内容が意味深だったことだ。

「君との出会いは、最も美しい偶然...僕は列に並んで、愛の整理券を持っている」

……

市文化センター。

チケットチェック後、野村香織は自ら小林輝明の腕に手を回し、二人は恋人同士のように展示室に入った。

今日の写真展のテーマは——「見上げる！」

関口美子は3年かけて世界中を旅し、カメラで撮影した作品群。ポートレート、風景、植物、人文風景、歴史的遺跡などが含まれていた。

彼女の師匠は、国内外で名を馳せたトップクラスの写真家で、その弟子にふさわしい腕前だった。

2000平方メートルの展示室は、シンプルな内装で、特殊な照明の下で、各展示台の写真が輝いていた。

展示室には優雅な音楽が流れ、人々は三々五々と各作品を鑑賞していた。

展示室に入ると、まるで世界一周をしているかのように、一枚一枚の作品が鑑賞者を世界のどこかへと連れて行く。

蛇行する芳しい小道、初恋のようなラベンダー、歳月を経た古びた風景、夢の中での出会い、野村香織は認めざるを得なかった。関口美子のこれらの作品は素晴らしく、芸術的生命力に満ちていた。

メディアも黙っていなかった。次々と来場者の感想を取材し、渡辺氏がバックについているため、メディアは自然と関口美子の写真展を後押ししていた。

ニュース報道とともに、関口美子の知名度は急上昇することだろう！

小林輝明と野村香織は一枚一枚の写真作品を鑑賞していたが、この人気若手イケメンは意外にも騒ぎを起こさなかった。

メディアのインタビューを受けていた関口美子は、時々入口の方を見ていた。渡辺大輔が来たら、すぐに出迎えるつもりだった。

休憩エリアで。

野村香織と小林輝明は革のソファに座って休憩し、スタッフが無料の飲み物を持ってきた。

展示品の大半を見終えて、野村香織は心の中で評価した。関口美子は写真技術が優れているだけでなく、芸術的な審美眼も非常に高い。それが彼女の弱点でもあった。

優雅で美しく、奥深い意境を持つ関口美子の作品は、それぞれに特徴があり、豊かな内容を表現していた。

小林輝明はジュースを一口飲んで言った：「香織姉さん、どう思う？」

「良いとは思うけど、私には分からないし、理解できないわ」

少し考えて、野村香織は答えた。

「ふふ、この展示室の中で、少なくとも3分の2の人があなたと同じだと断言できるよ」小林輝明は笑って言った：「彼らが一人一人エドワードだのコデカだのと大げさに議論しているように見えても」

「実際は、みんな分からないのに分かったふりをしているだけさ！」

野村香織は悟ったように、小林輝明の意図を即座に理解した。ここに来られる人のほとんどは、それなりの身分を持っている。芸術的な写真作品について一言二言評価することで、自分たちが文化的な教養を持っているように見せかけているのだ。