第25章 「老妖婆」

「香織、礼儀がないのかしら?二見叔母さんが話しかけているのよ。大輔兄さんと離婚したとはいえ、二見叔母さんは目上の人なのに、そんな態度でいいの?」香織が応答する様子を見せないので、関口美子は叱責した。

「ふん、関口さん、この前水に落ちた時、頭の中まで水が入ったんじゃないの?それとも、前回の教訓がまだ足りなかったのかしら?」香織は唇を引き締めて笑いながら言った。

関口美子は顔を曇らせた。前回の出来事で渡辺大輔の前で面目を失い、ここ数日は渡辺大輔に会いに行く勇気もなかった。特に渡辺大輔が全てを目撃していたと知ってからは、後ろめたい気持ちでいっぱいだった。

「お久しぶりですね、渡辺お婆さん。最近、お口の具合はいかがですか?」香織は意味ありげな笑みを浮かべながら、だらけた口調で二見碧子を見た。