去年の今頃、小村明音はある豪邸に目をつけました。総額は10億円で、柴田貴史へのサプライズにしようと、彼に内緒で貯金を始めました。外見は派手でも、実は毎月ベルトを締め、できるだけ出費を抑えていたのです。
これがなければ、彼女の稼ぎからすれば100万円以上なんて大したことありませんでした。でも柴田貴史が年初に彼女にプロポーズしたことで、プレッシャーは更に大きくなりました。その豪邸を新居にしようと考えていたからです。表面上は稼いだお金をすぐに使い果たしているように見せかけ、浪費家のような印象を与えていましたが、実は全て貯金していたのです。
「もう、そんなこと言わないで。私たちってどんな仲よ。彼氏以外なら、私のものは全部あなたのものよ」と小村明音は言いました。
野村香織は頷きました。「うん、その通りね」
二人は20年以上の付き合いで、実の姉妹ではありませんが、お互いの感情は姉妹以上のものになっていました。
酒が進み、料理も進み、二人はかなり飲みました。小村明音の頬は赤くなりましたが、野村香織の顔は飲めば飲むほど白くなっていきました。彼女は生まれつき酒豪で、普通の人は彼女には敵いません。
柴田貴史は二人の世話をしながら、終始一滴も飲みませんでした。野村香織に失礼というわけではなく、普段からほとんど飲まないからです。幸い、二人も彼に無理強いはしませんでした。
親友と一緒にいると、時間はあっという間に過ぎ、気がつけば夜の9時半になっていました。小村明音の要望で、野村香織は二人と一緒に下の階に行きました。
……
大富豪プライベートクラブ、1階のバー。
「香織ちゃん、今日は誕生日だから、ちょっとスリリングなことをしてみない?」小村明音は野村香織の腕に手を回して言いました。
野村香織は眉を上げました。「どんなスリリングなこと?」
「大冒険よ。これからナイトクラブに入って、最初に出会った男性にキスしてみるの。どう、できる?」小村明音は興奮した様子で言いました。
柴田貴史は眉をひそめ、小村明音の手を掴んで、冷たい声で言いました。「お前、飲み過ぎだ!」