第47章 黒幕のボス

先ほど野村香織にキスされたことで、彼は心が乱れ、それまでの軽やかで楽しい気分は消え去ってしまった。しかし、怒りも湧かず、外で半箱のタバコを吸っても、この感覚が何なのか分からなかった。

最も気がかりなのは、目を閉じると野村香織が踮つま先立ちでキスしてきた光景が浮かぶことだった。ネオンの光に目が眩んでいたのか、それとも女性本来の美しさなのか、とにかく野村香織がより一層美しく見え、その艶やかな顔立ちに、つい妄想が膨らんでしまう。

彼のそんな様子を見て、青木翔と川井遥香は目を合わせ、お互いの目から不可解さを読み取った。このような渡辺大輔の姿は初めて見るものだった。

青木翔は川井遥香にアイコンタクトを送り、渡辺大輔の方を顎でしゃくって、どうしたのか聞いてみるように促した。川井遥香は首を振り子のように振り、青木翔に目配せを返して、なぜ自分で聞かないのかと示唆した。青木翔は両手を広げ、苦笑いしながら、自分には勇気がないことを表現し、川井遥香も自分を指差して、同じく勇気がないことを示した。